interlude003
ここは望んだ場所だっただろうか?
走り出した頃の記憶は遥か遠くに置いて来た。振り返る度に押し戻されているような感じがして、怖かったから。でも今なら、取りに行けそうな気がする。
夢まではまだ距離があって、後姿さえ見えない。「少しずつ近づいてる」って君が言ってくれたら、ほんの少し安心するけれど。
だって時々、自分の心が分からなくなるんだ。今の僕は何なのか。昨日までの僕は何者だったのか。そして明日からの僕は何になろうとしているのか。
物凄い速度で通り過ぎる景色に心まで持っていかれそうになった時なんて数え切れない。
でも僕が今ここにいることが、幾多の難題を乗り越えて来た証でもある。
優しさをくれた音楽があった。けれどまだ僕は誰かに優しくできていない。
勇気をくれた音楽があった。でも僕はいつまで経っても強くなれない。
だからもっと優しくなりたい。その手を握ってやれるくらいに。
でも本当は、手の平の温もりが欲しいんだ。そしたらまた歩けるから。
それを気付かせてくれたのは、君のおかげだよ。
辛いこと、悲しいことはたくさんあるけれど、不思議と寂しくはないんだ。
それだけで、うん、もう大丈夫。やっていけそうな気がする。
心の中に明日を待ち焦がれる僕がいて、ふと笑みが零れた。