interlude023
一度満たされる幸せを覚えてしまうと、それにすがりたくなってしまう。
至福の時を過ごす素晴しさを体験してしまって、元の世界に戻りたくなくなる。
その瞬間を得る為に困難な現実を生き抜いている、と声高に言った所で、本心と照らし合わせると詭弁でしか無いんだろう。永遠に満たされる時の中に存在するなんてできやしないのに。
欲望は底無しで、引きずり込まれてしまうとどれだけ抜け出すのに大変な事か。
むしろ、欲望を満たそうと動いている瞬間の方が、人間として一番輝いている時かも知れない。何かを追い求め、ただひたすらに自分を突き動かす。
他人の心が欲しい。
自分の事を愛してくれる存在が欲しい。
金や物で欲望を満たし尽くした気でいても、それだけは簡単に手に入らない。誰かに愛される存在でいる事、それこそが全ての人間の生きている意味なのかとふと考える。
愛情を受け取る感覚はすぐに実感できるのに、愛情を与える感覚はどこかあやふや。だからこそ自分の中に温かで満たされるものを欲しがる。形の無い、でも確かなもの。
それをより強く感じたいから、僕はより他人を愛そうと思う。