→Rock'n Roll→  Tasogare Akane  top      第3巻

   069.ウイスキーグラス

 見知らぬ土地へ出かけるのは、それだけで結構冒険だ。
 俺と青空とイッコーとキュウの4人で、千夜を襲った奴らが根城にしていたハードコアのライヴハウスに足を運んでるところだ。キュウは学校があるので、放課後に近場の駅で待ち合わせる事になった。
 はっきり言って、県を跨いだ。前に『Days』のライブで遠征した事があるけど、そっちのライヴハウスとはまた路線が違う。自分の住んでる地域の入り組んだ路線さえ理解するのにままならないと言うのに、こっちに出てくるともう何が何だか。
 途中山を越えたり、田舎みたいに寂れた所も見た。この国は都会から離れると笑ってしまうくらいのどかな風景が広がってると今更ながらに思う。
 とは言え目的地のある場所は、そこそこに栄えていた。当然ながら、水海とは町並も全く違う。服の流行なんかは俺にはてんで理解できないけど。
「繁華街の方にあるんだっけ」
 青空が地図を印刷した紙を手に呟く。イッコーはこの町に来たことがあるのか、俺達を先導してくれるので黙ってついて行くことにした。
「しかし何で制服で来るかな、おまえは」
 危険な所に行くって事前に言ってるのに、何で理解してないんだキュウは。そんな俺の視線に、キュウは股下まであまりない制服のスカートをひらひらさせて答えた。
「先生に目つけられて今日は早退できなかったから、着替えるヒマがなかったのよ。午後は休みっぱなしの授業だったから、進級に響くって」
「どんだけ休んでんだ、単位制の大学じゃあるめーし」
 前を行くイッコーが呆れ顔で呟く。
「ったく、着替えるくらいの時間は待ってやるって。おれたちもあいつがこの時間にいるとは思ってねーよ。千夜の件で前にサツに協力した時、一応あいつの出没する曜日と場所を聞いておいたけど、それの確認も含めて早めに来てんだかんな」
「いいわよもう。このカッコの方がお色気作戦になるし」
「お色気作戦て何だ……見てるだけで寒くなる」
 防寒対策で太股までの長い黒ソックスを履いてるとは言え、丈の下からソックスの間は素肌が剥き出しだ。この糞寒い季節によくやる。溢歌もギリギリまで素足にワンピースだったし、女ってのは体の中に防寒具でも仕込んでるのか。
「まー、危なくなったらキュウ置いて逃げりゃ安心だろ」
「だな」
「コラコラ、アンタ達か弱い乙女に何ヒドいコト言ってくれちゃってるの」
 そんな俺達3人のやり取りを、青空は微笑ましそうに見てる。
 目的のライヴハウスはいかがわしい繁華街の端にあった。まだ太陽の日差しが残ってる時間帯でも歩いてるだけで一発でいかがわしい場所だと理解できる、そんな様相を示してる地域で、何時間何千円とか、ビデオ個室とか怪しい看板やネオンで通りは一杯だ。こんな所にハードコアのライヴハウスがあるなんて、ある意味似合ってると言うか。何の変哲もない地区に店を構えていたところで、それはそれでイメージとそぐわないか。
「今日はハードコアバンドのイベントがあるみてーだな。とりあえず俺と青空が先に行って訊いてくるわ。二人はそこで待ってな」
 そう言ってイッコー達が階段下に消えて行く。このライヴハウスの外観はラバーズとは違って地下に続く階段があるだけの、言われないとハコだとわからない形だ。
 他にチケットを求めに来る客の邪魔にならないように、少し離れた場所で待機する。たまに呼び込みの兄ちゃんがやって来るのを、キュウが愛想笑いであしらってる。
 気まずい。
「時間かかりそうだから、そのへんの部屋で休憩してく?」
 そんな俺を見抜いてキュウが茶化してくるから始末に負えない。
「あのな……もうちょっと友達の恋愛相手に気をつかえ」
「『だった』でしょ。ワケのわからない相手に浮気するくらいなら、アタシが寝取ってあげるわよ。一晩1万円でどう?知り合いだから出血大サービスよ」
「勘弁してくれ。その妙にリアルな数字が余計に萎える」
「何よ、せーちゃんはアンタみたいに文句も言わずに受け入れてくれたのに」
「なっ……!おまえ、青空と寝たのか!?」
 さりげない一言に心臓が飛び出そうになるほど驚いてる俺を、キュウはしれっとした顔で見る。
「だって、せーちゃん今回の騒動でボロボロだったもの。だから慰めてあげたのよ。あ、モチロンタダよ、お金なんて取ってないから」
「ドロボウ猫かおまえは……」
 心底呆れ返ってる俺。他人のことを言えた義理じゃない。
「そうは言うけど、ホントはアタシが慰めてもらったってトコかしら。立て続けに事件があったから、グロッキーになったもの。利害関係の一致ってやつさね」
 感慨深そうに話すキュウを見てると、これ以上怒る気にもなれなかった。しかし青空の心中を察すると、どんな思いでキュウを抱いたのか考えこんでしまう。溢歌のことをそんなすぐに忘れられる性格でもあるまいに。
「……で、青空とこのままつき合う気はあるのか?」
 真剣な眼差しで問いただす俺はまるで青空の保護者のようだと我ながら思う。
「さーて、どうかしら。アタシはせーちゃんのコトが大好きだし、構わないわよ。今のアバズレな態度が嫌だって言うんなら、直してみせる自信もあるもの」
「一応自分自身のことは理解してるんだな……」
「何か言った?」
「何も」
 千夜に負けず劣らずの地獄耳だ。
「でも、そうか、青空がな……」
 ここ数ヶ月の溢歌との三角関係を邂逅して、感慨深くなる。青空は本気で溢歌を愛してたに違いない。それでも他の女性を求めてしまったと言うことは、それだけ痛みを抱えてたんだろう。そんな青空を俺は憎むことができなかった。愁がいるのに溢歌を求めてしまった俺に似てる気がして。
「肉体関係を持ったからって、バンドの何が変わるわけでもないわよ。アタシにとって体を重ね合わせるコトなんて、コミュニケーションの延長線上でしかないんだから。相手をよりもっと深く知るためにするものなの。こうして会話してるのと同じ気分ね」
 キュウの持論に口を開けて相づちを打ってしまう。言ってる意味はわかるけど、割り切り方が他人と比べて過剰な気がした。でもそれがキュウ個人の特徴で、味か。
「変わった奴だな、おまえって」
「これまで数多くのオトコのヒトと出会ってきたけど、アンタほどの変人もいないわよ」
 率直な感想を述べただけなのに、思った以上の切り返しをされてしまった。俺自身相当変わり者なのは認めるけど、ちょっと心が痛い。
「あ、戻ってきた」
 辺りが暗くなり始めてネオンの光が目につくようになってきた頃合に、二人が人数分のチケットを手に戻ってきた。会場内で来るのを待とうと言うコトらしい。
「外で待ってても寒いだけっしょ。ジゴのやつは活動するバンドもなくなって、最近は他のバンドのサポートをやったりで結構イベントに顔を出すことが多くなったっつってたわ、中のスタッフが。だから今日待ってたら来るんじゃね?おれもこのへんの連中がどんな音出してんのか聴きてーし」
「それが一番の本音な気がする」
 俺に指摘されて、イッコーは赤い舌を出した。
「そんな広くねーハコだけど、常連客は多いみてーだしな。ほれ」
 イッコーが顎で指した先に、ライヴハウスの階段を下りて行く客達の姿が見えた。
 開演前まで一旦駅前に戻って、適当なファーストフードで軽食を摂る。開場前から中で待ってるとジゴに入口で引き返して逃げられる恐れがあるからだ。
「あのさ、今日捕まらなかったらどうすんの?」
「そんときゃまた来ればいいさ。ちょっとした遠出になるけどな」
 キュウの心配をイッコーが気楽に吹き飛ばす。ポジティブ過ぎるけど、ここまで来るだけでも俺は結構疲れたので次があればどうしようか少し悩む。おまえの千夜への想いやりはそんなものかと、神様がツッコミを入れてきそうだ。
 ライヴハウスへ戻る頃には、太陽もすっかり沈んで夜の帳が訪れていた。こりゃ家に帰るのも遅くなりそうだ。
 入口の階段下からは重低音が響いて、周囲の壁を振動させている。地下に降りると、熱気と半端のない大きな音が伝わってきた。
 チケットを切ってもらって場内に入る。トップバッターのバンドとは言えそこそこ人は入っていて、隙間のある空間のほうが少ない。ラバーズと比べると確かにハコは狭いけど、すぐにこのライヴハウスの盛り上がりを理解した。
 ガラの悪そうな人相の客が多くても、演奏中に場違いな俺達を見てちょっかいを出してくる連中はいない。キュウだけはカウンターに近い壁際の連中からナンパされてるようだ。
「しかしこんなに人がいると、ジゴを探すだけで一苦労だな」
 身長が170cmもない俺は、場内を見渡すだけで精一杯だ。ただジゴはイッコー以上に背が高かったので、いたら俺でもすぐに見つけられる。
「外で待ってていいか?鼓膜が破れそうだ」
 隣にいる青空に話すだけでも声を張り上げないといけないほど、今のステージにいるハードコアバンドは厚みのある音を出していた。ヴォーカルはダミ声で、デスメタルも若干取り入れてるところがあるだろうか。荒削りに聞こえるけど、こう言ったジャンルの楽曲は普段から全然耳にしないので善し悪しなんて俺にはさっぱりわからない。
「中で待ってよう。受付で陣取ってても何しに来たんだって思われるでしょ」
 青空の言うことももっともだと納得して、入口付近まで下がった。さすがに混雑した電車並の押しくらまんじゅうはきつい。自分がステージの上に立つ時は何ともないのに、いざ観るほうに回ると人混みで一気に疲れてしまう。
「ちょっと、少しくらいかばってよ」
 一つ目のバンドが終わった時、キュウがそばに近づいて助けを求めてきた。どうも客にちょっかいを出されまくってるらしい。スタッフも止める気はないようだ。
「だから言ったろ。ただでさえ女なのにそんな格好で来るなんて。声かけられるのが嫌ならもっと前に行ったらどうだ」
「おさわり地獄に飛びこめっての?ムチャ言わないでよ」
「だったら外で待ってろよ。後で駅前に迎えに行くから」
「アタシを一人にする気!?こんな風俗街で一人突っ立ってたら襲われてお持ち帰りよ」
 ああだこうだと一々うるさい。俺と話してるほうが寄り付く連中も減るからか、次のバンドが始まっても延々と一方的に喋りかけてくる。それでも誘いに来る相手は俺と恋人同士の設定にしてあしらってるようだ。体のいいように扱われてるな俺。
 なかなかジゴが来ないのでしびれを切らしてると、3バンド目が一曲目を演奏し始めた頃に入口からジゴが姿を見せた。俺達も入口付近にいたので不意を突かれて驚く。気づいて真っ先に声をかけに行こうとするキュウを制止して、半ばにいる青空を呼びに行った。
「イッコーは……あれ、何で前にいるの」
 青空が周囲を見回すと、イッコーが最前列付近にいた。ジゴにも気づかずライヴを楽しんでる。このバンドの演奏が終わるまで呼びに行けそうにもないので、放っておいて3人でジゴにかけ合うことにした。
「あん?あんたらは……」
 カウンターでドリンクを注文し終わったジゴのそばまで行くと、俺達に気づいて訝しげな視線を返した。今日はライヴを見るためか、前の時のカウボーイハットは被ってない。
 それでも、錨柄の黒い革ジャンとズボンに身を包んで、いかつさは相当なものだ。
「千夜の件で、話があって来た」
 鋭い眼で俺が言うと、ジゴはやれやれと肩を竦めた。
「せっかく演奏観に来たってのに……ここじゃまともに話もできなそうよね」
 相変わらずのオカマ口調で、妙に聞く相手を苛立たせる素振りだ。一旦受付前まで移動して、そこで改めて今回わざわざやって来た理由を青空が説明した。
「わざわざご苦労な事よね。仲間を想う気持ち?ってのはわかるけど」
 一々軽々しい口調に反応していてもしょうがないので、怒りはぐっと飲み込む。
「――でも、ちゃんと説明しておいた方がいいか。とりあえず、今のバンド終わるまで待っててくんない?今日はこいつら聴きに来たんだもの」
「そんなの待ってられるほどこっちはお人好しじゃ――」
「まあまあ黄昏。彼を怒らしても逆効果なだけだよ。ここは相手のテリトリーなんだし」
「む……わかった。あいにくうちのもう一人も中で熱狂してるから、終わるまで待っとく」
 青空にたしなめられて、渋々引き下がる。どのみちイッコーを置いてはいけないし、事を荒立てて奴らの仲間にこの場で囲まれでもしたら不利過ぎる。キュウもそれを承知なのか、俺の後ろでじっと見守っていた。
 どうやら3バンド目が結構人気のあるバンドらしく、そこで客の数も一気に増えて場内はすし詰め状態になった。俺達3人はあぶれてしまって再び中に入るのもままならない。ステージ時間も最初の二つより長く、かなり待たされた後でジゴが戻ってきた。ビールの入ったドリンクを手にしてる。
「んじゃ、行きましょう。ここで話すより、ちゃんとした場所があるから」
「そうやってアタシ達を襲う気じゃないでしょーね」
「何言ってんの。オレの悪そなバンド仲間もみーんな捕まっちゃったし、そんなコトできるわけないじゃないの。ま、音楽以外じゃソリの合わない連中ばっかりだったしね……」
 警戒心の強いキュウにジゴが顎をさすりながら答える。
「信用しないならここでお別れ。アンタたちの義理人情につき合うヒマはないしね」
「さっきから人が下手に出てれば……」
「キュウも落ち着いて。そんなに不安なら、キュウだけ先に戻ってるといいよ。やっぱり危険だし」
「だから手出ししないって言ってるじゃないの……ま、いいわ。オレ先に行くから」
 呆れ顔で耳を小指でほじりつつ、ジゴはライヴハウスの階段を登ろうとする。イッコーを置いてけぼりにしていいものかどうか悩んだ矢先に、汗だくで場内から戻ってきた。
「やー、思わず熱中しちまって本来の目的忘れちまったぜ。ってそいつ!」
「はいはい、静かに話のできる場所まで行くんだからココで手出しちゃダメよん」
 ジゴの姿を見つけて髪の毛が逆立つ(元からだけど)イッコーに、余裕のある表情でジゴは返す。青空に手短に状況を教えられ、イッコーも振り上げた拳を引き下げた。
 ライヴハウスを出ると、一気に冬の寒風が身に染みる。ジゴは体を震わせて、俺達をよそにスタスタと先を歩いていく。
「おい、どこ行くんだよ!?」
「歩いて10分くらいのトコよ。そんな離れてないから心配なさんな」
 改めて俺達4人は顔を見合わせる。キュウだけでも駅前で待ってたほうがいいと男連中が言っても、断固として聞き入れる様子がなかった。しょうがないのでもし襲われた場合には真っ先にキュウだけ逃がすことを約束して、ジゴの後を追う。
 結構歩いただろうか。大通りから外れ、街の郊外に出る付近にある大きな倉庫の前で、ジゴは足を止めた。明かりも少なく、周囲には住居もない。いかにも何かありそうな、寂れた雰囲気を醸し出している。
「前のバンドで使ってた廃倉庫よ。練習するのにもってこいだったんだけどねえ」
 名残惜しそうにジゴは呟いて、シャッター横の非常口の扉を開けた。スイッチで中に明かりを灯すと、そこそこに広い倉庫内と、練習用に使ってた機材や黒いソファやテーブルが置かれているのが見えた。洋画に出てきそうな感じの雰囲気だ。
「ね、ダレもいないでしょ?」
 相変わらず警戒心を解かない俺達に言う。ジゴはソファに体を投げ出すと、テーブルに置かれていた酒瓶を掴んで適当なグラスに注ぎ、口の中に一杯入れた。
「アタシはすぐ逃げ出せるようにここにいるわ」
 念のため、キュウは入ってきた非常口の前にいる。俺達3人はジゴの前まで行って、見下ろす形になる。
「突っ立ってても疲れるだけだから座ればいいのに。で、今更何を聞きたいってワケ?今のオレは、組んでいたバンドも解散して次の仲間を捜してるしがない一ミュージシャンよ」
 俺達はみんなで顔を見合わせて、率先して青空に問いを任せることにした。
「どうして千夜を襲ったの?」
「襲った?オレは何にもしちゃいないわ。ただあいつらが勝手にやったコト。警察もオレんトコに事情徴収に来たけどね、捕まったあのバカ共のお仲間だって。ちゃんとシロってのが証明されてるから、今ここにこうしているワケだけど。ああ、ヤってる最中の写真撮ったのを携帯に入れっぱなしにしてたせいでパクられたヤツはいたねえ」
 本当に他人事のように答えるジゴ。
「でも、あいつらは千夜を襲ってる時に、君から千夜の過去について聞いた、みたいな事を言ってた。彼等に入れ知恵したんじゃないかって僕は思ってるんだけど」
 疑り深い目を向ける青空を、ジゴは一笑に付す。
「入れ知恵?ないない。ただ単に昔話をしただけ、そっちの縄張りのライヴハウスで揉め事起こした後にね。別にあいつらを焚きつけようなんて思ってたワケじゃないわ。一人でいるトコを襲うなんてのは全然想像してなかったもの。捕まった連中の中に裏ビデオ系のヤバいヤツがいるってコトは知ってたけど、別に興味も口挟むつもりもなかったしね」
「そのアンタのくだらない昔話のせいで、おねーさまは襲われたんじゃないの!?」
 入口そばにいるキュウの大声が、倉庫内にこだまする。ジゴは煩わしそうに姿勢を変えて、キュウのほうを見た。
「くだらないかどうかはともかく、実際にあったコトを話しただけよ。もしかして、アンタら知らないの?波止場が昔何されてたかって」
 俺とイッコーは顔を見合わせる。青空は難しそうな顔で、口を開く。
「……中学生の頃、同じように男の人達に襲われたって話?」
「ちょっ……アタシそんなコト聞いてないわよ!?」
「オレも初めて聞いたぜ、んな話」
 キュウとイッコーが目を丸くして驚いている。俺は事前に青空から聞かされていたので驚くことはないけど、事実なんだと思うと改めて気が沈む。
「なんだ、知ってたんだ。結局、あの時と同じになっちまったわね。相変わらずオレ一人蚊帳の外って言うか――でもそのおかげで豚箱に入れられるコトもないしね」
 ジゴは二杯目の酒をグラスに注いで、今度はちびちびと飲み出した。
「僕も、千夜の母親に見舞いの時にほんの少し聞かされただけで、詳しい事は知らない。だから過去に何があったのか、教えてくれないかな」
 懇願する青空を見て、ジゴは少し悩んだ素振りの後、ソファにきちんと座り直した。
「ま、せっかくこんなトコまで来てくれたついでだ、教えてあげるわよ。本人に訊いたトコで教えてくれないだろうしね」
 俺達は痛みを負うのを覚悟して、酒が回って饒舌なジゴの話に聞き入った。


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